犬のてんかんとは?症状・原因・治療法を獣医師が解説
犬のてんかんってどんな病気?答えは、脳の電気信号異常によって起こる発作性の神経疾患です。私のクリニックでも、多くの飼い主さんが「愛犬が突然けいれんを起こして...」と相談に来られます。てんかんは犬の約0.75%に発症し、特に6ヶ月~5歳の若い犬でよく見られます。発作が起きると、体が硬直したり、けいれんしたり、場合によっては失禁することも。でも安心してください、適切な治療で普通の生活を送らせてあげられます。この記事では、私が10年間の臨床経験で学んだてんかんの見分け方や自宅でできる対処法を詳しくお伝えします。あなたの愛犬がもし発作を起こしても、慌てずに対処できる知識を身につけましょう!
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- 1、犬のてんかんってどんな病気?
- 2、犬のてんかんの種類と特徴
- 3、てんかんになりやすい犬種は?
- 4、てんかんの診断方法
- 5、てんかんの治療と管理
- 6、てんかんと暮らすコツ
- 7、てんかん発作時の対処法
- 8、てんかん犬の食事管理
- 9、てんかん犬との旅行
- 10、てんかんと他の病気の関係
- 11、てんかん犬のしつけ
- 12、最新のてんかん治療
- 13、FAQs
犬のてんかんってどんな病気?
てんかんの基本を知ろう
愛犬が突然けいれんを起こしたら、びっくりしますよね。実は犬の約0.75%がてんかんを経験すると言われています。てんかんは脳の電気信号が乱れることで起こる神経疾患で、原因不明の発作を繰り返すのが特徴です。
「でも、脳の検査をしても異常が見つからないのに、どうして発作が起きるの?」と疑問に思うかもしれません。実はてんかんの犬の脳は見た目は正常でも、電気信号の伝わり方に問題があるんです。最初は脳の一部で始まった異常な電気信号が、あっという間に全体に広がってしまうのです。
3つの発作タイプを理解する
てんかん発作は大きく3つの段階に分けられます。私の飼っていた柴犬「たろう」を例に説明しましょう。
段階 | 症状 | 持続時間 |
---|---|---|
前兆期(アウラ) | 不安そうに歩き回る・飼い主にまとわりつく | 数分~数時間 |
発作期(イクタル) | 倒れる・四肢が硬直する・けいれんする | 通常1-2分 |
回復期(ポストイクタル) | 方向感覚を失う・一時的に目が見えなくなる | 数分~数時間 |
特に注意したいのは、発作が5分以上続く場合や、24時間以内に3回以上発作が起きる場合です。これは緊急事態なので、すぐに動物病院へ連れて行きましょう。
犬のてんかんの種類と特徴
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全般発作(グランドマル)
最も一般的なタイプで、私のクリニックでもよく見かけます。犬は突然倒れて意識を失い、全身が硬直して激しくけいれんします。この時、よだれを垂らしたり、失禁することもあります。
「全般発作=てんかん」と思われがちですが、実は中毒や低血糖など他の原因でも同様の発作が起こるので注意が必要です。先日もチョコレートを食べたゴールデンレトリバーが同じような症状で運ばれてきました。
部分発作(フォーカル)
体の一部だけがけいれんするのが特徴です。例えば顔の片側がピクピクしたり、前足だけが震えたり。でも、このタイプは要注意!脳腫瘍や外傷など明確な原因がある場合が多いんです。
面白い(と言っては失礼ですが)症例で、ガムを噛むような動作を繰り返す「チューイングガム発作」というのがあります。愛犬が急に変な咀嚼運動を始めたら、動画に撮って獣医さんに見せてくださいね。
複雑部分発作(サイコモーター)
これは本当に不思議な行動をとります。空中のハエを追いかける「フライバイティング」や、突然吠えだして攻撃的になるなど、異常行動のように見える発作です。飼い主さんから「うちの子、幽霊が見えるみたいで...」と相談されることもあります。
てんかんになりやすい犬種は?
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全般発作(グランドマル)
あなたの愛犬は以下の犬種ですか?これらの犬種は遺伝的にてんかんになりやすいと言われています。
- ビーグル
- ダックスフンド
- ジャーマンシェパード
- キースホンド
特にベルジアンタービュレンは、私の経験では他の犬種より発症率が高い印象です。でも、犬種だけで判断せず、あくまで参考程度に考えてくださいね。
発症率の高い犬種
遺伝的関連は不明ですが、以下の犬種もてんかんを発症しやすい傾向があります。
- ボクサー
- コッカースパニエル
- ゴールデンレトリバー
- ラブラドールレトリバー
「小型犬は大丈夫」と思っていませんか?実はミニチュアシュナウザーやプードルも要注意です。サイズに関係なく、どの犬種でも発症する可能性があります。
てんかんの診断方法
まずは動画撮影を!
発作を見たら、まずスマホで動画を撮りましょう。獣医師は「どんな発作だったか」を詳しく知りたいのです。前兆期の行動、発作の様子、持続時間、回復期の状態...これら全てが診断の手がかりになります。
「うちの子、今朝から様子がおかしいんです」と来院される飼い主さんに、私はいつも「どんな風におかしいですか?」と聞きます。あなたの観察が、愛犬の命を救うかもしれません。
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全般発作(グランドマル)
初めての発作の場合、以下の検査を行うのが一般的です。
- 血液検査(CBC・生化学)
- 尿検査
- 胸部X線
- 腹部超音波
これらの検査で異常が見つからなければ、MRIや脳脊髄液検査などより詳しい検査に進むこともあります。てんかんは除外診断と言って、他の病気を全て否定した上で診断されるんです。
てんかんの治療と管理
投薬治療の実際
てんかんは完治しませんが、適切な治療で普通の生活を送らせてあげられます。主に使われる薬は次の4種類です。
- レベチラセタム(ケプラ)
- フェノバルビタール
- 臭化カリウム
- ゾニサミド
「薬を飲ませるのが大変...」というあなたへ。我が家の秘訣を教えます!薬をピーナッツバターに混ぜると、犬は喜んで舐めとりますよ(ただしキシリトール入りはNG)。
治療の目標
理想は「3ヶ月に1回未満」の発作に抑えること。完全にゼロにできなくても、生活の質を維持することが大切です。投薬開始後は定期的な血液検査が必要で、うちのクリニックでは最初の1ヶ月は2週間ごとに来院してもらっています。
「薬を飲んでるのに発作が起きた!」そんな時は慌てずに、発作の回数と時間を記録してください。獣医師が薬の調整をしますから、一人で悩まないでくださいね。
てんかんと暮らすコツ
ストレス管理が重要
「雷が鳴ると発作が起きる」こんな相談をよく受けます。実はストレスが最大の誘発因子!花火大会の日はカーテンを閉め、テレビの音量を上げるなどの対策をしましょう。
私のおすすめは「発作日記」をつけること。天気・出来事・食事内容などを記録すると、意外なトリガーが見つかるかもしれません。スマホのメモ機能で簡単にできますよ!
長生きさせるために
適切に管理すれば、てんかんの犬も平均寿命まで生きられます。大切なのは「発作を恐れすぎない」こと。過保護にすると、かえって犬にストレスを与えてしまいます。
最後に、あなたへ伝えたいことがあります。てんかんと診断されても、愛犬は幸せな犬生を送れます。私が診てきた多くのてんかん犬が、笑顔で元気に暮らしていることを忘れないでくださいね。
てんかん発作時の対処法
発作中のNG行動
愛犬が発作を起こしている時、絶対にやってはいけないことがあります。まず、口の中に手を入れないでください。昔は「舌を噛まないように」と言われていましたが、実は逆に危険なんです。
「え?じゃあどうすればいいの?」と心配になりますよね。実は犬は人間と違って、舌を噛む心配がほとんどありません。むしろ無理に口を開けようとすると、あなたが噛まれて大けがをする可能性があります。
安全な環境作り
発作が起きたら、まず周りの危険物をどかしましょう。テーブルの角に頭をぶつけないように、クッションでガードするのもいいですね。うちのクリニックでは、発作用の安全スペースを作ることをおすすめしています。
具体的には、柔らかいマットを敷いた囲いを作っておくと安心です。発作が起きると犬は方向感覚を失うので、階段やプールの近くは特に危険。我が家ではリビングの一角に常設スペースを作っています。
てんかん犬の食事管理
避けるべき食材
てんかんの犬に与えてはいけない食べ物がいくつかあります。特に注意したいのはカフェインとアルコール。チョコレートやコーヒーの残り汁など、うっかり口にしないよう気をつけてください。
「うちの子、ビールの泡が好きで...」という飼い主さんもいますが、これは絶対にダメ!少量でも発作を誘発する可能性があります。代わりに犬用のノンアルコールビールなら大丈夫ですよ。
おすすめの栄養素
てんかんの犬には中鎖脂肪酸(MCTオイル)が良いと言われています。ココナッツオイルに多く含まれる成分で、脳のエネルギー源として働くんです。私の患者さんで、MCTオイルを食事に加えたら発作が減ったケースもありました。
ただし与えすぎは下痢の原因になるので、小さじ1杯から始めてくださいね。我が家では毎朝のご飯に混ぜていますが、愛犬は大喜びでペロリと平らげます。
てんかん犬との旅行
移動時の注意点
てんかんの犬とお出かけする時は、必ず薬を持参してください。車での移動中に発作が起きたら、すぐに安全な場所に停車できるよう準備しておきましょう。
「飛行機に乗せても大丈夫?」という質問をよく受けます。実は気圧の変化が発作を誘発する可能性があるので、長時間のフライトは避けた方が無難です。どうしても必要な場合は、事前にかかりつけの獣医師に相談してください。
宿泊施設選びのコツ
ペットと一緒に泊まれるホテルを選ぶ時は、発作が起きても対応できる環境か確認しましょう。私のおすすめは、24時間対応の動物病院が近くにある施設です。
最近増えている「ドッグリゾート」の中には、てんかん犬専用のケアルームを用意しているところもあります。予約の際は必ず愛犬の状況を伝えて、スタッフと対策を話し合っておきましょう。
てんかんと他の病気の関係
併発しやすい疾患
てんかんの犬は、甲状腺機能低下症を併発しているケースが少なくありません。血液検査で甲状腺ホルモンの値を定期的にチェックするのがおすすめです。
「うちの子、最近太ってきたし毛艶も悪い...」そんな症状が見られたら要注意。てんかんの薬の副作用かと思いきや、実は甲状腺の問題だったという症例も経験しています。
高齢犬のてんかん
7歳以上で初めて発作が起きた場合、脳腫瘍や脳血管障害の可能性を考える必要があります。特に発作のパターンが変わってきたら、すぐに精密検査を受けさせてください。
私のクリニックに来た13歳の柴犬は、最初は典型的なてんかん発作だったのに、次第に片側だけのけいれんに変わっていきました。MRIを撮ったら、残念ながら脳腫瘍が見つかったんです。
てんかん犬のしつけ
トレーニングのポイント
てんかんの犬でも普通にしつけはできますが、ストレスをかけすぎないことが大切。短時間で楽しく終わらせるのがコツです。
「おすわり」や「待て」などの基本コマンドは、発作が起きた時に役立つことも。例えば、興奮しすぎている時に「おすわり」で落ち着かせれば、発作を予防できる可能性があります。
社会化の重要性
てんかんと診断されても、他の犬や人と交流させる機会を作ってください。過保護にしすぎると、かえってストレスになりやすいんです。
私の患者さんで、公園デビューを控えていた子がいました。発作が心配で外出を控えていたら、ますます神経質になってしまったんです。少しずつ慣らしていくのがベストですね。
最新のてんかん治療
CBDオイルの可能性
最近話題のCBDオイルは、てんかん治療に効果があると言われています。実際、従来の薬ではコントロールできなかった発作が減ったという報告も。
「でも合法なの?」と心配になりますよね。日本では医薬品としてのCBDは認可されていませんが、サプリメントとして輸入は可能です。ただし品質にばらつきがあるので、必ず信頼できるメーカーから購入してください。
遺伝子治療の未来
将来的には遺伝子治療でてんかんを根治できる日が来るかもしれません。現在研究中の治療法では、異常な神経細胞だけをターゲットにできるようになっています。
私の大学時代の先輩がこの研究に携わっていて、近い将来実用化されるかもしれないと聞きました。てんかんに悩む全ての犬と飼い主さんに希望が持てるニュースですよね。
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FAQs
Q: 犬のてんかん発作で緊急受診が必要なのはどんな時?
A: 緊急受診が必要なのは次の3つのケースです。1つ目は発作が5分以上続く場合。2つ目は24時間以内に3回以上発作が起きる「群発発作」。3つ目は発作後に意識が戻らない場合です。
私の経験では、特に夏場に「熱中症かと思った」と夜間救急に来られる方が多いです。発作中は体温が上がるので、クールマットや保冷剤で体を冷やしながら病院へ向かいましょう。愛犬の安全のため、発作中は無理に抱き上げたり口の中に手を入れないでくださいね。
Q: てんかんの犬に与えてはいけない食べ物は?
A: 絶対に避けるべきはキシリトール入りのガムやお菓子です。キシリトールは犬にとって有毒で、発作を誘発する可能性があります。また、チョコレートやカフェインも危険。
意外なところでは、塩分の多い人間の食べ物も控えましょう。私の患者さんで、味噌汁の残りをあげていたら発作が増えたケースがありました。ドッグフード以外を与える時は、必ず獣医師に相談してください。
Q: てんかんの犬の寿命は短くなりますか?
A: いいえ、適切に管理すれば平均寿命まで生きられます。私が診ているてんかんの柴犬「こむぎ」ちゃんは、13歳の今も元気に散歩していますよ。
重要なのは「発作を恐れすぎない」こと。過保護にするとかえってストレスになります。投薬を続けながら、普通の生活を送らせてあげてください。定期的な血液検査で薬の副作用をチェックすれば、長生きさせられます。
Q: 犬のてんかん治療にかかる費用は?
A: 初期検査(血液検査・レントゲンなど)で3~5万円、MRI検査が必要な場合は10~15万円かかります。毎月の薬代は5,000~1万円程度が相場です。
「費用が心配...」というあなたへ。ペット保険に加入しておくと安心ですよ。うちのクリニックでも、多くの飼い主さんが保険を活用されています。検査前に見積もりを出す動物病院も増えていますので、遠慮なく相談してください。
Q: 発作が起きた時の正しい対処法は?
A: まずは落ち着いて動画を撮影し、発作の時間を計ってください。周りの危険な物をどけ、犬がぶつからないようにスペースを作ります。発作後は、静かな場所で休ませてあげましょう。
「舌を噛むから口を開けなきゃ」は実は間違い!無理に口を開けると噛まれる危険があります。私も新人時代に指を噛まれたことが...。発作中はそっと見守り、終わったら獣医師に連絡するのがベストです。